最高裁判所第三小法廷 昭和62年(オ)168号 判決 1990年2月06日
上告人 遠藤栄一 ほか一一名
被上告人 国
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人前田進、同桑嶋一、同市木重夫、同置田文夫の上告理由第一について
国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて当該立法を行うというように、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法一条一項の適用上、違法の評価を受けるものでないことは、当裁判所の判例とするところであり(昭和五三年(オ)第一二四〇号同六〇年一一月二一日第一小法廷判決・民集三九巻七号一五一二頁)、また、積極的な社会経済政策の実施の一手段として、個人の経済活動に対し一定の合理的規制措置を講ずることは、憲法が予定し、かつ、許容するところであるから、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限って、これを違憲としてその効力を否定することができるというのが、当裁判所の判例とするところである(昭和四五年(あ)第二三号同四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五八六頁)。そして、昭和五一年法律第一五号による改正後の繭糸価格安定法一二条の一三の二及び一二条の一三の三は、原則として、当分の間、当時の日本蚕糸事業団等でなければ生糸を輸入することができないとするいわゆる生糸の一元輸入措置の実施、及び所定の輸入生糸を同事業団が売り渡す際の売渡方法、売渡価格等の規制について規定しており、営業の自由に対し制限を加えるものではあるが、以上の判例の趣旨に照らしてみれば、右各法条の立法行為が国家賠償法一条一項の適用上例外的に違法の評価を受けるものではないとした原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、違憲をも主張するが、その実質は原判決の右判断における法令違背の主張にすぎない。論旨は、採用することができない。
同第二について
所論の点に関する原審の判断は、その説示に照らして是認するに足り、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判官 坂上壽夫 安岡満彦 貞家克己 園部逸夫)
上告理由<略>